【NAVAJO】ナバホのビンテージジュエリー、非常に重厚なバンド(地金)に質の高いシルバーワークが施され、さらに美しいジェムクオリティターコイズがマウントされた大変ハイエンドな作品。エッジのファイルワークや深く刻まれたスタンプワークにより、立体造形作品としても高い完成度を感じさせるアンティーク/ビンテージバングルです。
1950年代頃に作られた作品と思われ、おそらくインゴットシルバー(銀塊)から成形されたバンドは、シルバーゲージに換算すると9ゲージに相当する2.9㎜ほどの厚みがあり、60g近い重量感を持ったブレスレットとなっています。
フロントにはスクエアカットされた3つの上質なターコイズがマウントされており、石を連続して羅列する『ローワーク』とも呼ばれる造形スタイルとなってます。それらの石の間には、単独のスクエアワイヤーを捻ることで作り出すツイステッドワイヤーが配されており、その上下や石の両脇には小さなコンチョも備えられています。それらのさり気ないシルバーワークによって、高さのある石がバンドに馴染み、ターコイズの周辺に奥行きをもたらすことで、ターコイズの質を際立たせています。
また、サイド~ターミナル(両端)にかけては、非常に質の高いスタンプ(鏨)ツールによる刻印がとても力強く刻まれています。さらに、それらのスタンプワークによる文様と呼応して、上下のエッジ部分には『ファイルワーク』と呼ばれるヤスリによる立体的な刻みが施されており、大きく削られたエッジはバンドに躍動感と立体感をも与えているようです。また、このファイルワークにによってエッジにナチュラルな角度が与えられ、手首に装着した際にとても馴染みが良く、動いた時にはハイポリッシュで仕上げられたシルバーの輝きに動きとコントラストが付加されています。これらのシルバーワークはどれもプリミティブで伝統的な技術となっていますが、その丁寧で質の高い仕事によりどこかモダンで現代的な雰囲気を帯びているようです。
『スタンプワーク』という技術は、スタンプ/鏨ツールを打ち付けることによってシルバーに文様を刻みこんでいますが、その鏨ツールはシルバーよりも硬い鉄(鋼)で作られています。その為、その加工はジュエリー制作よりもはるかに高い難易度です。そして、ナバホジュエリーにおけるスタンプワークは、古くからその根幹を成す技術の一つであり、シルバースミスの「技術力」は、スタンプツール/鏨を制作する「技術力」次第であり、優れたシルバースミスは、優れたスタンプメーカーと同義です。また、スタンプのクオリティは現代作品とビンテージ作品を見分ける上でも大きな特徴となります。1950年代以前の作品で見られる1920年代~1940年代に作られたスタンプツールの多くは、本作と同様に非常に細かな文様を刻むことが出来る高い質を持ち、アンティーク作品独特の特徴ともなっています。
【McKee Platero】マッキー・プラテロ氏や【Perry Shorty】ペリー・ショーティー氏等、現在でもアンティークを凌ぐクオリティのスタンプツールを制作可能な作家は存在しますが、残念ながら現在では多くのシルバースミスが市販されているスタンプツールを使用しており、スタンプツール自体を制作する作家は限られた存在となっています。
また、本作に見られるスタンプの質や、ファイルワークと組み合わせられた突出した造形センス、そしてターコイズの質等からは、ナバホの偉大な作家【Fred Peshlakai】フレッド・ぺシュラカイ(1896-1974)の作品を想起させますが、ホールマーク(作者のサイン)等が刻印されておらず、作者は不明となっています。
マウントされたターコイズは、その色相やマトリックスの特徴からは【Burnham/Godber Turquoise】バーナム/ガドバーターコイズが推測されますが、明確に特定することは出来ません。ローンマウンテンターコイズにも近い色彩をベースに、ブラウンやゴールドのウェブが入り複雑で奥行きのある表情を見せています。リペアと思われる部分が含まれていますが、それでもなおジェムクオリティ/宝石としての価値を持った石です。
アンティーク作品においてこちらのようなグレードのターコイズが用いられていることは非常に稀で、作品の希少価値をさらに高めています。ビンテージナバホジュエリー独特の武骨でワイルドな印象と、クラシックで完成されたデザインや深淵な美しさを見せるターコイズは、少しフォーマルなシーンにも対応できる品位を持っています。
また、腕に対するナチュラルなフィット感やボリューム感、そして装着感も素晴らしく、アートの域まで高められたシルバーワークと造形美はインディアンジュエリーの中でも最高峰に位置するクオリティとなっています。
突出した造形センスと洗練されたシルバーワーク、さらにジェムクオリティによって作り出された存在感と完成度は、アートピース・ウェアラブルアートとしても高く評価できるブレスレットです。
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コンディションは、古い作品のためシルバーには多少のクスミ等が見られ、ハンドメイド独特の制作上のムラはありますが、使用感はとても少なく大変良好なコンディションです。
ターコイズはサンドカラーになっている部分など、リペアの跡と思われる部分がありますが、石の動きやクラック等のダメージは無く、現在も素晴らしい発色を保っています。