【NAVAJO】ナバホのビンテージジュエリー『UITA22』の刻印により、【United Indian Trader's Association】(UITA)に参加していたトレーダー/トレーディングポストで作られた事が判断可能なアンティーク/ビンテージバングルです。
さらに、末尾のナンバー『22』 から【Dean Kirk of Manuelito】ディーン・カーク オブマヌエリートで生まれた作品と判り、高い技術のシルバーワークをベースとして、スクエアカットターコイズがマウントされた、オーセンティックでビンテージジュエリー独特の味わいを持ったブレスレットとなっています。
1940年代後半~1950年代に作られた作品と思われ、インゴットシルバー(銀塊)から成形された重厚なバンドをベースにしており、サイドからフロントに向かってフロント部分が3本に割り開かれた『スプリットバンド』と呼ばれるナバホの伝統的なスタイルに造形されています。
フロント部には、ワイルドな印象のスクエアカットのターコイズがマウントされ、そのベゼル(覆輪)の外側には2本のシルバーワイヤーを撚り合わせたツイステッドワイヤーが施されています。
さらに、その両サイドには流麗なワイヤーワークや三角形のアップリケが配され、トラディショナルで複雑な表情を作りながら優れた調和を見せるシルバーワークとなっています。
また、バンドのターミナル(両端)付近には力強く深いスタンプワークが刻み込まれています。
それは現代の作品では殆ど見ることが出来ないビンテージ作品特有の質を誇るスタンプ(ツール(鏨・刻印)によって、非常に細かく繊細な文様が刻まれ、ナバホジュエリーらしい複雑な表情が生み出されているようです。
ナバホジュエリーの伝統的な技術とディテールによって構成された作品ですが、そのデザイン/造形には、武骨ながら作者の拘りやオリジナリティを感じさせる仕上がりとなっています。
【the United Indian Trader's Association】(以下UITA)は1931年に組織され、C. G. WallaceやGARDEN OF THE GODS TRADING POST、Tobe Turpen等をはじめ、最終的には75のトレーディングポスト/インディアンアートトレーダーが加盟する組織となりました。
UITAが組織された目的は、BELL TRADING POSTやMaisel's等のManufacturersと呼ばれるインディアン工芸品の分業化や量産化を推し進めたメーカー(マスプロ)に対抗するためで、伝統的な製法や材料、一つの作品を一人のシルバースミスが全行程を通して制作するという体制等を守ることなどを規定し、上記のマスプロ品との差別化を計ることでした。
当時、サウスウエスト地方の観光の隆盛に伴ってスーベニア産業もその需要に応えるため、多くのショップやメーカーが生まれました。それらは元々トレーディングポストとして運営されていましたが、やがて多くのインディアンを雇い入れるMaisel'sやBell等のメーカーも創業されることになります。
初期の1910年代~20年代までは、双方の作品には製法やデザインに大きな差がありませんでした。 しかし、後者のメーカーは1930年代に入ると工房で多くのインディアンに同時制作させることにより分業化や機械化をはじめ、少しずつ伝統的な製法や作品の味わいは失われていきました。
また、それらのメーカーの生産する作品の多くはクリエイティブな作家を要するトレーディングポストで生まれた作品の模倣も多く、NAVAJO GUILDの作品やGARDEN OF THE GODS TRADING POSTに所属したAwa Tsirehのデザイン、VAUGHN'S Indian Storeの作品等は多くの模倣品が作られています。
特にこれらの模倣作品はピンブローチが多く、UITAの作品はブレスレットやコンチョベルト等すべてのアイテムに見つけることが出来ますが、ピンブローチに比較的多く刻印されている傾向があるのは、模倣品との明確な区別を促すためだったのではないかと推測されます。
また、UITAではそれぞれのトレーダー(ショップ)ごとにナンバーを割り振っており、『UITA』の末尾にそれぞれのナンバーが刻印されています。それらの内、いくつかのナンバーはそのトレーダーが判明していますが、いまだ不明となっているナンバーも多く存在しています。
『1』 = 【Gallup Mercantile】 ギャラップ マーカンタイル
『2』 = 【C. G. Wallace INDIAN TRADER】C.G.ウォレスインディアントレーダー
『12』 = 【Packards Indian Trading】パッカーズインディアントレーディング
『21』 = 【SOUTHWEST ARTS&CRAFTS/Ganscraft】サウスウエスト アーツアンドクラフト
等々・・・
そして、本作も内側に刻印されたホールマーク【UITA22】の末尾の数字『22』から、【Dean Kirk of Manuelito】ディーン・カーク オブマヌエリートで販売された作品であることを特定することができます。
【Dean Kirk of Manuelito Trading Post】ディーン・カーク オブマヌエリート トレーディングポストは、1881年に【Mike Kirk】マイク・カークによってニューメキシコ州ギャラップで創業した歴史あるトレーディングポストのすぐそばで、1942年代の同氏の死後、息子である【Dean Kirk】ディーン・カークが始めたトレーディングポストです。
その作品群は多岐にわたり、プエブロの作品を想起させるシンプルなブレスレットから、ツーリストスタイルのピンブローチ等も多く見られます。
また、多くのシルバースミスが所属していたと推測され、その作者を特定することは出来ませんが、本作の様に素晴らしいクオリティーを持つ作品が多く残されており、UITAの刻印が入ると云うことは、その製法や材料等について厳しい条件をクリアしていることを表しています。
本作もオーセンティックなディテールで構成されており、クラシックな雰囲気やイメージを備えながらもオリジナリティを感じさせる作品。
『UITA22』の刻印を持つ作品らしい唯一無二の独創的のあるバングルとなっています。
また、古い作品ながら特別なデザイン/造形のセンスを感じさせ、クラシックな印象を与えるスクエアカットターコイズやアーシーで渋い質感により、少しフォーマルな装いを含み、多くのスタイルに馴染みやすいブレスレットです。
UITAのホールマークが刻印されることで、制作背景が考察可能であり、その製法や材料などに裏付けを持った作品。希少性・史料価値も高いアンティークジュエリーの一つ。コンディションが完璧ではない為に、トレジャーハントプライスなピースとなっています。
◆着用サンプル画像はこちら◆
コンディションはシルバーのクスミやハンドメイド特有の制作上のムラ、等が見られますが、それほど使用感の強い状態ではありません。
ターコイズには、僅かなクラックと古いリペア跡が見られますが、クウォーツのマトリックスの様にも見え、肉眼ではリペア跡には見えません。
またガタツキ等は無く、着用に不安の無いコンディションとなっています。